結論から書きます。私は介護施設の施設長として、選択的週休3日制を6年間運用しました。結果、人材不足は解消し、求人広告を出さなくても専門職を採用できる状態になりました。一方で、シフト作成担当者の負担増という想定外のデメリットにも直面しました。この記事では、そのすべてを正直にお伝えします。

この記事でわかること

  • 実際に介護施設で週休3日制を導入した経営幹部・経営者の生の声
  • 介護施設に週休3日制を導入した際のメリット・デメリット

介護施設の週休3日制導入について網羅的に知りたい方は、完全ガイド記事もあわせてご覧ください

この記事を書いている人

週休3日の専門家

株式会社週休3日 代表取締役 永井宏明。2006年、29歳のときに「週休3日総務課長」として地域密着企業に転職し、自ら週休3日正社員として働き始めました。同法人で介護施設の施設長に就任し、8年間施設を運営。就任3年目の2008年から、施設に選択的週休3日制を導入し、6年間運用しました。2016年に株式会社週休3日を創業。2022年からは複数の介護施設の経営にも携わっています。

つまり私は、コンサルタントとして外から週休3日制を語っているのではなく、介護施設の現場で週休3日制を導入・運用し、今も経営者として採用と定着の難しさに向き合っている実務者です。週休3日制導入の実際について詳しくご説明させていただければと思います。

株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。

週休3日制導入支援

講師依頼・メディア

導入前の状況|求人を出しても応募がゼロだった

私が施設長を務めていた介護施設では、導入前、深刻な人材不足に悩まされていました。ハローワークや求人誌に求人を出しても、応募がまったく来ない状態が続いていたのです。当時はリーマンショック前で、どちらかといえば好景気でした。景気が良いと、人はより条件の良い会社・業界に流れます。介護の現場は、その煽りをまともに受けていました。

「求人媒体を変えれば応募が来るのではないか」「掲載料を上げれば露出が増えるのではないか」。当時の私も、そう考えて手を打っていました。しかし結果は変わりませんでした。今振り返れば、これは「穴の開いたザルに水を入れる」ような状態だったと思います。求人にお金をかけても、その前段にある「働き方そのものの魅力」が整っていなければ、応募は増えません。当時の私たちの施設には、その土台がなかったのです。

導入の背景ときっかけ|他に手立てがなかった

選択的週休3日制を導入した直接のきっかけも、人材不足でした。少しでも求人を差別化しようと考え、編み出したのが選択的週休3日制です。

選択的週休3日制_週休2日正社員と週休3日正社員を選択できる

ここで明確にしておきたいことがあります。選択的週休3日制は、全職員を週休3日にする制度ではありません。週休2日か週休3日かを、職員自身が選べる制度です。給与は一般正社員の8割程度(日給月給制)に設定しました。当時から、働く時間に見合った報酬にするという、今で言う同一労働同一賃金の考え方を意識していました。

施設長として介護施設の採用を考えた時、経営者は懐疑的でした。普段は理解を示してくれることが多い経営者でしたが「そんな働き方にニーズがあるのか」「そこまでやる必要があるのか」と疑問をお持ちのようでした。さらには現場の従業員たちも懐疑的でした。「正社員なのに給与が下がる。そんな変わった働き方をしたい人はいないだろう」と皆が話していました。ただ、他に人材不足を解消するアイデアがなかったので、なんとか周囲の理解を得て、募集を開始しました。

導入直後に起きたこと|1ヶ月で応募が来た

結果は、想像以上でした。募集を開始して1ヶ月ほどで応募がありました。今から15年以上前です。面接の際も応募者は「本当にこんな働き方ができるんですか?」と慎重な態度だったことを覚えています。丁寧に説明をして最初の応募者から週休3日正社員として採用できました。当時は珍しい働き方だったからだと思います。それまで何を出しても応募ゼロだった状況から一転、看護師や介護士を週休3日正社員として採用できるようになったのです。

弊社が2021年に20代・30代を対象に実施した独自調査でも、「週休3日という選択肢があると魅力的」と回答した人は94.2%(とても魅力的54.3%、少し魅力的39.9%)にのぼりました。また、「最も魅力的な働き方」として、給与8割の週休3日正社員を選んだ人は28.7%です。私が現場で体験した「応募が来た」という手応えは、感覚だけの話ではなかったのだと、後になってこのデータを見て確信しました。

(誤解のないようにお伝えすると、現在は当時よりもさらに採用環境が厳しくなっています。現在は週休3日正社員だからと言ってすぐに応募が来るわけではありません。この点はご注意ください。)

運用1〜3年目|最初のデメリットはシフト担当者の負担増だった

メリットだけを語るのはフェアではありません。運用初期、最も大きなデメリットとして直面したのが、シフト作成担当者の精神的負担の増加でした。

毎月のシフト作成は、ただでさえ担当者を苦しめる仕事です。そこに新しい働き方が加われば、負担がさらに増えると誰もが考えます。実際、導入直後のシフト担当者からは、不安の声が上がりました。

ただし、運用を重ねる中で見えてきたことがあります。シフトはパズルの要素が大きい仕事です。個々に就業時間がばらつきやすい時給者が多い事業所と、8時間均一で働く一般正社員・週休3日正社員の比率が大きい事業所とを比べると、実は後者の方がシフト作成の負担は小さくなります。「新しい制度が導入されると大変になる」という印象が先行し、実際以上に負担を感じているケースが多いのではないかというのが、私の実感です。

もうひとつのデメリットもお伝えします。週休3日で勤務する職員は、出勤の間隔が空きがちになります。そのため、現場の変化についていくことに不安やストレスを感じる場合があります。この点は、申し送りの仕組みや情報共有の頻度を工夫することで、ある程度は緩和できますが、事業所ごとの個別性が大きい課題です。

給与設計についても、この時期に社内で何度も説明しました。「勤務日数が5分の4になるから、単純に給与も8割」という理解だけでは、職員への説明として弱いと感じたからです。介護施設を支えてくれていた一般正社員(週休2日)が大切であり、給与も含めて尊重している上で、週休3日正社員を選択した際の働き方・給与・勤務日数等を丁寧に説明しました。。「なんとなく8割」ではなく「計算根拠のある8割」であることを、職員に説明できるかどうかが、制度への納得感を大きく左右します。そのあたりはぜひ知見がある弊社にご相談いただければ間違い無いかと思います。

運用4〜6年目|構成比が大きく変わった

運用が軌道に乗ってからの数年間、人材採用における雇用形態の構成比は大きく変化しました。この期間の採用における割合は、一般正社員が3割、週休3日正社員が6割、時給者が1割程度でした。

週休3日正社員での採用が中心になっていった背景には、育児・家族の介護・自身の体調など、フルタイムでは働き続けにくい事情を抱えた職員が、正社員の立場を保ったまま働き続けられるようになったことがあります。全員が週休3日を望んでいたわけではありません。しかし、給与が下がってでも週休3日を選びたいという職員は、確実に一定数存在しました。

週休3日正社員の構成比率が38%a

なお上の図では正社員の比率が高くなっていますが、ちょうど介護施設の増床を見据えて正社員を先行して採用している時期だったことも影響しています。

6年間の結果|人材不足の解消と離職率の改善

運用を開始してから6年が経過した頃には、全体の3分の1を超える職員が週休3日で働く介護事業所になっていました。おかげさまで人材不足は解消し、人に困らない介護施設になったというのが、率直な実感です。

離職率についても、体感として明確な改善がありました。具体的な数値は明言を避けますが、離職率は半分以下に減りました。(セミナーや週休3日制導入支援の中ではご紹介しています)求人広告を出さずに専門職を採用し続けられる状態になったこと自体が、定着率の向上を裏づける事実だと考えています。

今振り返って|良かった点と苦労した点を正直に

良かった点は、明確です。人材不足という、施設運営の根幹を揺るがす課題に、外部からお金をかけて解決するのではなく、働き方そのものを見直すことで対応できたこと。そして、フルタイムでは働き続けられなくなった職員に「辞める」以外の選択肢を用意できたことです。実際、フルタイム継続が難しくなったベテランスタッフが、週休3日を選んで現場に残ってくれたケースもありました。技能や経験を持つ職員に、正社員のまま働き続けてもらえることの価値は、採用コストだけでは測れません。

苦労した点も、正直にお伝えします。シフト作成の負担感、給与設計の説明責任、そして「なぜあの人だけ週休3日なのか」という職員間の公平感の調整。これらは、制度を導入して終わりではなく、運用しながら都度向き合い続ける必要がある課題でした。6年間、完璧に運用できていたわけではありません。それでも、続けてきたからこそ見えてきた成果があったというのが、私の実感です。

よくある質問

Q1. 選択的週休3日制を導入すると、全職員の休みが増えて人件費が上がるのではないですか?

いいえ。選択的週休3日制は、希望する職員だけが週休3日を選べる制度です。全員の休日を一律に増やす制度ではないため、人件費の増加は限定的に抑えられます。

Q2. 給与を一般正社員の8割にするのは、法的に問題ないのですか?

労働時間の比率に加え、有給休暇の相対的価値なども踏まえて設計すれば、同一労働同一賃金の観点から根拠のある水準として説明できます。ただし制度設計は事業所ごとに個別性があるため、弊社が週休3日制導入を支援させていただく際には、社会保険労務士と連携し、法令チェックをさせていただくこともございます。

Q3. シフト作成の負担は、本当に導入前より増えるのですか?

導入直後は負担感を訴える声が出やすいです。しかし、8時間均一勤務の職員比率が高まることで、実際にはシフトが組みやすくなるケースもあります。負担感と実際の負担量は、必ずしも一致しません。

Q4. 小規模な介護施設でも導入できますか?

規模の大小にかかわらず導入は可能です。ただし、制度設計や運用ルールは施設の事情に合わせて個別に検討する必要があります。

週休3日制導入、次の一歩を踏み出したい方へ

ここまで読んでくださった方は、すでに人材不足や離職という課題と、日々向き合っている経営者・運営者の方だと思います。同じ課題に向き合ってきた当事者として、次の一歩をお手伝いできればと思います。ぜひお気軽にご相談ください。

株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。

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この記事を書いた人

週休3日の専門家
永井 宏明 / Hiroaki Nagai
株式会社週休3日 代表取締役

印刷広告代理店営業、WEBコンサルを経て、静岡県の地域密着企業で週休3日総務課長で転職。人事・総務として10年勤務。同法人で介護施設の施設長に就任。8年間施設長を務め、多くの見取り(終末期)をコーディネート。同介護施設で週休3日制導入し6年間運用。その後、株式会社週休3日を創業し、2017年から事業開始。週休3日正社員という働き方の選択肢を広げる活動を続ける。2022年7月、クリニックからの事業承継により認知症グループホームの経営に参画。子供4人、共働き、育児パパ。趣味は演劇。作・演出 作品で静岡県芸術祭賞 他受賞。