結論から申し上げます。介護保険制度における常勤の勤務時間数の下限は、週32時間です。
これより短い時間しか働いていない従業員は、制度上「常勤」として扱うことができません。そして選択的週休3日制でよく採用される「1日8時間×週4日勤務」は、まさにこの32時間という下限ラインに位置する働き方です。
私は8年間、介護施設の施設長として現場を運営し、そのうち6年間は選択的週休3日制を自ら導入・運用してきました。今も複数の介護施設の経営に携わる立場として、人員配置基準の解釈を誤ったまま週休3日制を進めることの危うさを、身をもって知っています。この記事では、根拠となる厚生労働省のQ&Aから、実務上の注意点、そして週休3日制を安全に運用するための3つのポイントまで、経営者・人事担当者の目線でお伝えします。
この記事でわかること
- 介護施設における常勤換算の考え方
- 介護施設における常勤の下限の勤務時間
- 介護施設に週休3日制を導入した際の常勤及び常勤換算の考え方
- 介護施設において週休3日制を導入する際の、常勤・常勤換算に関することの注意点
介護施設の週休3日制導入について網羅的に知りたい方は、完全ガイド記事もあわせてご覧ください
この記事を書いている人

株式会社週休3日 代表取締役 永井宏明。2006年、29歳のときに「週休3日総務課長」として地域密着企業に転職し、自ら週休3日正社員として働き始めました。同法人で介護施設の施設長に就任し、8年間施設を運営。就任3年目の2008年から、施設に選択的週休3日制を導入し、6年間運用しました。2016年に株式会社週休3日を創業。2022年からは複数の介護施設の経営にも携わっています。
つまり私は、コンサルタントとして外から週休3日制を語っているのではなく、介護施設の現場で週休3日制を導入・運用し、今も経営者として採用と定着の難しさに向き合っている実務者です。
株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。
週休3日制導入支援
講師依頼・メディア
常勤換算の根拠は「介護保険最新情報vol.454」
介護保険制度における常勤換算の基準は、厚生労働省が公開している文章で確認できます。その一つが「介護保険最新情報vol.454(平成27年度介護報酬改定に関するQ&A)」です。該当箇所を引用します。
常勤換算方法については、従前どおり「当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本とする。)で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法」であり、その計算に当たっては、育児・介護休業法の所定労働時間の短縮措置の対象者の有無は問題にはならない。

この一文のポイントは2つです。
1つ目は、常勤の勤務時間数そのものは、各事業所が就業規則で定めるものだという点です。国が一律に「常勤とは週◯時間」と決めているわけではありません。
2つ目は、その事業所が定める時間数が32時間を下回る場合は、常勤換算上「32時間」を基本として計算するとされている点です。つまり、就業規則で「常勤は週30時間」と定めていても、常勤換算の計算上は32時間で扱われることになります。逆に言えば、週32時間であれば、制度上ギリギリ許容される下限だということです。厚生労働省はこのQ&Aを通して、「常勤の考え方における実質的な下限は週32時間である」という公式見解を示しているといえます。
なぜ32時間なのか
「なぜ32時間なのか」という根拠や経緯について、私が調べた限りでは、厚生労働省から明確な説明は確認できませんでした。実は他の医療保険制度上でも週32時間というのは出てくる数字です。ただし数字の出し方から推測すると、シンプルに週40時間の5分の4という考え方で算出されたものと考えられます。
参考までに、社会保険が適用される労働時間の基準として長く用いられてきたのは「一般社員の4分の3以上」です。一般社員が週40時間だとすると、こちらは週30時間がポイントになります。32時間という数字は、これと近い発想から来ているのではないかと私は見ています。
いずれにせよ、経営者として押さえておくべきなのは根拠の由来そのものより、「32時間を下回ると、その従業員は常勤として扱えなくなる」という制度上の事実です。
常勤換算方法の実務上の注意点
ここで多くの経営者が見落としがちな点があります。それは、常勤を定義しているのは国ではなく、各事業所の就業規則であるということです。
以前、私が短時間正社員制度を導入した際、「短時間正社員は常勤にあたるか」を行政と議論したことがあります。行政からの回答は「各事業所において常勤者が就労すべき時間を勤務している者が常勤だと認識している」というものでした。つまり、常勤の定義そのものは事業所側の就業規則に委ねられているのです。
このことから、実務上の注意点は次の2つに整理できます。
就業規則の記載と、介護サービス情報公表システムへの記載を一致させること。
義務付けられている介護サービス情報公表システムの項目には「1週間のうち、常勤の従業者が勤務すべき時間数」があります。ほとんどの事業所が週40時間と記載していますが、稀に週37.5時間や週32時間としている事業所もあります。これが認められるのは、常勤の勤務時間数の下限が32時間だからです。
就業規則の定義と、実際の勤務シフトが乖離しないようにすること。
就業規則上「常勤は週32時間」と定めているのに、実際の勤務体系がそれと整合していなければ、労務トラブルや実地指導での指摘につながりかねません。制度設計は、必ず就業規則との総合的な整合を取ったうえで進める必要があります。

介護施設対象 週休3日制導入オンラインセミナー
約1時間のオンラインセミナーですが受講者の93.8%が高評価。
受講者の導入をお考えの介護事業者様はもちろん、導入を検討している・迷っている介護事業者様におすすめのセミナーです。
週休3日制(1日8時間×週4日=32時間)が下限ギリギリに位置する意味
常勤換算は、選択的週休3日制を導入するか、一律の週休3日制を導入するかで変わってきます。ここでは選択的週休3日制(週休2日と週休3日を選択できる)についてご説明をさせていただきます。
選択的週休3日制で最も採用されやすいのが、1日8時間勤務を週4日行う「週32時間」の働き方です。この数字を見て、勘の良い方はお気づきかもしれません。これは常勤換算の下限である32時間と、まったく同じ数字です。
つまり、1日8時間×週4日の週休3日正社員は、常勤として扱えるギリギリの働き方だということです。ここには経営者として押さえておくべき注意点が2つあります。
1つ目は、下回ってはいけないという点です。週32時間の週休3日制を運用する中で、祝日、年末年始・ゴールデンウィーク・夏季休暇等で実労働時間が変動することがあります。しかし、就業規則上の「常勤が勤務すべき時間数」自体を32時間未満に設定してしまうと、常勤換算方法の基本ルールから外れてしまいます。制度設計の段階で、この下限を割り込まない設計にしておくことが欠かせません。ここは厳密に数値を算出しながら制度設計した方が良いでしょう。
2つ目は、給与水準の設計とセットで考える必要があるという点です。週休3日正社員の給与は、一般正社員の約80%に設定するのが、同一労働同一賃金の観点から妥当な根拠のある水準だと私は考えています。ただし厳密に言うと他の事情・要件も絡んできますので、それらを理解した上で、週休3日正社員の給与は一般正社員の80%程度と設定すべきでしょう。法的リスクが低く、かつ職員に対して「感覚ではなく、計算した結果です」と説明できる数字になります。常勤としての人員配置基準を満たしながら、給与面でも納得感のある制度に仕上げることが、週休3日制を長く運用するための土台になります。
シフト作成・人員配置基準を満たしながら週休3日制を運用する3つのポイント
ここまでの内容を踏まえ、実際の現場で人員配置基準を満たしながら週休3日制を運用するためのポイントを3つに整理します。
ポイント1:常勤換算の考え方を事前に整理しておく
週休3日制を導入する前に、自社の就業規則における「常勤の勤務すべき時間数」を確認し、常勤換算方法の計算式にどう反映されるかを整理しておきます。介護サービス情報公表システムの記載内容と就業規則の内容が一致しているか、あわせて点検してください。ここが曖昧なままシフトを組み始めると、後から常勤換算数が合わなくなり、人員配置基準そのものを満たせなくなるリスクがあります。
ポイント2:選べる条件と上限を明確にする
選択的週休3日制は、全員を週休3日にする制度ではありません。あくまで、希望する職員が選べる制度です。 どの職種・どの勤続年数から選択できるのか、同時に週休3日を選べる人数の上限(例:各シフト帯で常勤換算数が基準を下回らない範囲)をあらかじめ定めておくことで、人員配置基準を割り込むリスクを避けながら制度を運用できます。
ポイント3:変更タイミングを固定する
週休2日から週休3日へ、あるいはその逆への変更タイミングを、随時ではなく年1〜2回など固定の時期に統一します。変更のタイミングが不規則だと、その都度シフトと常勤換算数の再計算が発生し、担当者の負担が跳ね上がります。緊急性の高い事情(家族の介護・体調変化など)は例外的に随時対応する一方、それ以外は定期切り替えとするルール設計が現実的です。
なお、これは私が普段お伝えしていることですが、求人広告や人材紹介にお金をかける前に、まず働き方という土台を整えることが先決です。人員配置基準を満たせない状態のまま採用活動に投資しても、穴の開いたザルに水を注ぐようなもので、せっかく採用した人材の定着にはつながりません。まずは常勤換算と人員配置基準という土台を固めたうえで、選ばれる働き方としての週休3日制を組み立てることをおすすめします。
よくある質問
Q. 週休3日制を導入すると、常勤換算数が下がって人員配置基準を満たせなくなりませんか?
A. 1日8時間×週4日(週32時間)であれば、常勤換算方法上は「1.0人」としてカウントされます。時間数そのものが下限ギリギリであることは事実ですが、就業規則との整合が取れていれば、基準を満たせなくなるわけではありません。ただし、週32時間を下回る設計(例:1日6時間×週4日など)にすると常勤として扱えなくなるため、注意が必要です。いずれにせよ、選択的週休3日制にするのか全員を週休3日制にするのか等の事情により大きく変わってきまので、専門家に相談するのが良いと思います。
Q. 週休3日を選ぶ職員が増えすぎると、人員配置は不安定になりますか?
A. 株式会社週休3日が推奨している選択的週休3日制は、全員が対象の制度ではなく、実際に選択する職員は1割前後にとどまるケースが多いです。とはいえ、同一シフト帯に選択者が偏らないよう、あらかじめ上限や条件を設けておくことで、人員配置の安定性を保つことができます。
Q. 就業規則を変更しないまま週休3日制を始めることはできますか?
A. おすすめしません。常勤の定義・常勤換算方法の考え方は就業規則に紐づいているため、週休3日制という新しい働き方を追加する場合は、必ず就業規則の該当箇所を見直し、最終的には社会保険労務士などの専門家と整合を確認したうえで導入することをおすすめします。
Q. 週休3日制を選ぶ職員の給与は、一般正社員の何%が妥当ですか?
A. 労働時間の比率(週32時間÷週40時間)に加え、同一労働同一賃金の観点から、一般正社員の約80%が妥当な根拠のある水準だと考えています。しかしながら、いくつかの事情や要件を踏まえた上で80%程度で設定すべきです。給与設定の考え方については株式会社週休3日にご相談いただければ、厳密な考え方をご案内させていただきます。
週休3日制の導入、まずは無料相談から
人員配置基準を満たしながら選択的週休3日制を安全に導入するには、常勤換算・就業規則・給与設計の3点を同時に整える必要があります。私たちは、介護施設の経営者・管理者と同じ立場でこの制度と向き合ってきた実務者として、貴施設に合わせた設計をご支援します。
株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。
週休3日制導入支援
講師依頼・メディア
介護施設の週休3日制導入について網羅的に知りたい方は、完全ガイド記事もあわせてご覧ください
