前回は、介護事業所の働き方(常勤)は事業所が決めているというお話をさせていただきました。では、介護事業書は常勤(働き方)を何らの制限なく定義して良いのでしょうか。今回はそのあたりを見ていきたいと思います。

常勤換算における下限の考え方

事業者が提供する介護保険サービスの種類によって人員配置が定められているのは皆さんがご存知の通りだと思います。介護事業者が人員配置を行う上で重要になってくるのが、常勤と常勤換算です。常勤換算の考え方から見ていきたいと思います。介護保険制度における常勤換算の基準となっているのが、厚生労働省が介護サービス関係Q&Aで公開している記載内容です。「介護保険最新情報vol.454(平成二十七年度介護報酬改定に関するQ&A)」が発出時期の文章となります。そのまま引用します。

常勤換算方法については、従前どおり「当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本とする。)で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法」であり、その計算に当たっては、育児・介護休業法の所定労働時間の短縮措置の対象者の有無は問題にはならない。

この記載内容のポイントは以下2点です。まずひとつめ。前回もお話させていただいた通り、各事業所が決めている常勤(働き方)定義における勤務時間数を基に常勤換算方法が成立している点。ふたつ目。常勤の考え方は週32時間がポイントとなっている点。週32時間を下回ると勤務時間数は介護サービスを提供する常勤勤務者として適切ではない、という趣旨の記載です。逆を言えば、週32時間であればギリギリ許容するということになります。厚生労働省はQ&Aを通して「常勤の考え方における下限は週32時間との公式見解を発している」といえます。話が少し脱線しますが、ではなぜ週32時間なのかという点。この根拠や数値を出した経緯は私が調べたところ確認できませんでした。厚生労働省の数値の出し方から見れば、シンプルに週40時間の5分の4ということで週32時間という数字を算出したのだと思います。ちなみに社会保険が適用される労働時間において、長く基準となってきたのは一般社員の4分の3以上です。つまり一般社員が週40時間だとすると、週30時間がポイントとなってきました。これと同じような考え方だと思います。

常勤換算における制度上の下限が週32時間であるということは、常勤勤務者の制度上の下限も週32時間であると言えるでしょう。実際、義務付けられている介護サービス情報公表システムの項目の中に「1週間のうち、常勤の従業者が勤務すべき時間数」があります。ほとんどの事業者が週40時間と記載していますが、稀週37.5時間だったり、週32時間だったりします。これが認められるのは、介護保険制度における常勤の勤務時間数の下限が週32時間だからです。ただし、就業規則などと総合的に対応しないと問題が起こりますので厳重な注意が必要です。