前回、介護事業所の働き方改革を実現する為のポイントは「経営者自ら 頭を柔らかく」とお伝えしました。なぜ大切なのか、今回はご説明したいと思います。

常勤を定義しているのは事業所自身

以前、マネジメントをしていた介護施設において、短時間正社員制度を導入した時のことです。(育児短時間勤務ではない)短時間正社員が常勤にあたるかあたらないかを、行政と議論・検討していた時のことでした。行政からの「短時間正社員は常勤ではない」という意見に対し、私は「では何時間以上就労すれば常勤にあたるのか具体的な数字を示して欲しい」とお願いしました。しかし、行政からは「具体的な数字は示すことができない。各事業所において常勤者が就労すべき時間を勤務している者が常勤だと認識している。」という回答でした。それを受け「では事業所の判断として、短時間正社員を常勤と扱っていいのか」と私から確認すると、行政からは「一般的に短時間正社員は常勤と認められないように思う」との回答がありました。再びこちらから「では何時間以上就労すれば…」と聞き返すという、噛み合わないやりとりがしばらく続きました。

そんなやりとりの中、なんとか活路を見出そうと関係法令を読み解いていて気付きました。常勤を定義しているのは各事業所における就業規則だったのです。「そんなことは知っている」という経営者の方も多いと思います。しかし、制度・ルールを充分に理解し活用している方はほとんどいないのが実情です。固定観念に縛られ、無自覚に定義した働き方(常勤)に苦しんだり悩んだりして常勤の従業員が定着しないといったケースもよく見られます。

経営者自ら働き方を考えてみよう

就業規則に関心を持つ経営者の方は多くはありません。どちらかと言えば、社労士さんに言われて整備される方が多いのではないでしょうか。多くの経営者が社労士さんに任せて「これが一般的な就業規則です」と提案してもらったまま採用しています。気になるところを社労士さんに相談し多少修正するなどはありますが、ほぼ提案通りです。社労士さんは「事業所が労使問題で困らないように」「できるだけ最新の一般的な就業規則を用意できるように」と、関係法令を遵守しながら、事業者・経営者・就業者にとって最適な就業規則をご提案されています。実際に就業規則を整備できていることで回避できる労使の問題は多いはずです。確かに労働基準法や労務に関する法令・制度については社労士さんはエキスパートです。しかし、介護事業の運営については介護事業所の経営者の方がエキスパートです。(そうあるべきです) ぜひ、介護保険法の人員配置・常勤に関する記述を読み、現場を思い浮かべながら、事業所のあるべき働き方(常勤)について考えてみてください。ご存知の通り、介護事業所のサービスの根幹は「人」です。その「人」の働き方(常勤)を経営者が自ら考えることは、介護経営において非常に大切なことだと思います。誰かに任せっきりにせず、経営者自ら頭を柔らかく向き合うことが、介護事業における働き方改革のはじめの一歩となります。

なお介護保険制度においては、常勤の就業すべき時間数には下限があります。次回はこれを取り上げたいと思います。