介護施設から週休3日制導入のご相談をいただくと、半数以上が「1日10時間勤務・週4日」の形を検討されています。

理由は単純です。週40時間という現在の労働時間を変えずに休みだけ増やせるので、給与を維持できるからです。職員に「休みが増えるだけでお給料は変わりません」と説明しやすい。経営側にとっても、労務設計がシンプルに見えます。

私も8年間、介護施設の施設長として現場を運営し、うち6年間は選択的週休3日制を自分の施設で運用してきました。今も経営者として複数の介護施設に携わり、選択的週休3日制を導入・運用しています。その実感から先に結論をお伝えします。

1日10時間型は、相談件数がもっとも多い型でありながら、実は運用難易度がもっとも高い型です。

この記事では、1日10時間型のメリットと、現場で実際につまずくポイントを正直にお話しします。

この記事でわかること

  • 1日10時間の週休3日制度のメリット
  • 1日10時間の週休3日制導入にあたっての課題・ポイント

介護施設の週休3日制導入について網羅的に知りたい方は、完全ガイド記事もあわせてご覧ください

この記事を書いている人

週休3日の専門家

株式会社週休3日 代表取締役 永井宏明。2006年、29歳のときに「週休3日総務課長」として地域密着企業に転職し、自ら週休3日正社員として働き始めました。同法人で介護施設の施設長に就任し、8年間施設を運営。就任3年目の2008年から、施設に選択的週休3日制を導入し、6年間運用しました。2016年に株式会社週休3日を創業。2022年からは複数の介護施設の経営にも携わっています。

つまり私は、コンサルタントとして外から週休3日制を語っているのではなく、介護施設の現場で週休3日制を導入・運用し、今も経営者として採用と定着の難しさに向き合っている実務者です。

株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。

週休3日制導入支援

講師依頼・メディア

1日10時間型のメリット:給与を変えずに休日を増やせる

最大のメリットは、給与水準を維持したまま週休3日を実現できることです。

弊社が2021年に20代・30代を対象に実施した独自調査では、「週休3日という選択肢があると魅力的」と回答した人は94.2%(「とても魅力的」54.3%+「少し魅力的」39.9%)にのぼりました。給与を減らさずに休みを増やせる働き方は、職員側にとっても受け入れやすい提案です。

介護保険の報酬制度に立脚する介護事業では、そもそも「働く時間を減らしても給与は変わらない」という制度設計は成立しにくい業界です。だからこそ、1日8時間を10時間に伸ばし、週の総労働時間を変えずに休日だけ増やす1日10時間型は、給与面での説明のしやすさという点で、経営者にとって最初に検討したくなる型なのです。

なお大前提として、選択的週休3日制は全職員を週休3日にする制度ではありません。希望する職員が選べる制度です。1日10時間の週休3日制導入を検討されている事業者は、一律での変更を考えて、ハードルが上がったり、判断を躊躇されるケースが多いようです。

都市部など若い世代が多いエリアによっては1日10時間の週休3日制導入を全従業員一律で実施するのが適しているケースもあります。しかし、一般的には選択的週休3日制の導入が無難ですし、導入しやすいです。今までの働き方も選択できますので、デメリットや影響もそこまで大きいものは発生しません。

注意点1:既存職員の勤務開始・終了時間の変更が生活を揺さぶる

1日10時間型を導入するとき、最初にぶつかる壁が勤務開始時間と終了時間の変更です。

既存の職員は、今の勤務時間が自分の生活リズムに合っているかを確認したうえで、この仕事を選んでいます。子どもの送り迎え、家族の介護、通勤の交通機関、食事や睡眠のリズム。すべてが今の勤務時間を前提に組み立てられています。介護業界では、特に女性が活躍する事業所が多いと思いますので、1日10時間の週休3日制導入は、就業者自身のこと以上に、家族(子育て・介護 等)に与える影響が大きいことは注意すべきです。

「週の労働時間は変わらないから」という説明だけでは、既存職員の納得は得られません。開始・終了時間が1〜2時間ずれるだけで、生活の土台そのものが崩れてしまうことがあるからです。私自身、施設長時代に勤務時間の見直しを検討した際、ベテラン職員から「今の時間だからこそ続けられている」という声を受け取りました。制度上は魅力的でも、既存職員にとっては「働き方を変えられる」という不安要素になり得るのです。

男性の経営陣や人事等を担当する幹部が「働く人のためにもなる」と1日10時間の週休3日制を全従業員一律で導入しようと意気込み頓挫するケースのほとんどは、申し上げた就業者はもちろんその家族のことまでイメージできていないと言わざるを得ません。ご注意ください。

注意点2:保育園・福祉サービスの時間と噛み合わない

介護業界は女性の比率が高い業界です。厚生労働省の資料でも、介護福祉士国家試験の合格者のうち女性比率は約7割にのぼります。

保育園に子どもを預けながら働く職員のケースを考えてみましょう。エリアによって差はありますが、預けられる時間は早朝7時台から延長保育を含めても19時前後までが一般的です。特に地方においては18時または18時30分頃までという保育園が多いでしょう。仮に1日10時間勤務(休憩を含めると11時間拘束)だとすると、送り・迎えの両方をこなすのは現実的に難しくなります。パートナーや家族のサポートが得られる家庭ばかりではありません。

これは保育園に限った話ではありません。家族の通院の付き添いや、学童保育の利用時間なども同様です。また、家族の介護や介護サービスの利用を前提とした生活をされている方にも大きな影響があります。1日8時間勤務でも時間の確保が厳しいと感じる職員は多いのに、1日10時間勤務ではさらにハードルが上がります。人材不足の業界において、就業できる可能性がある人を自ら限定してしまうリスクがあるという点は、見過ごせないデメリットです。

注意点3:欠員時の募集が「特殊な条件」になり、充足に苦戦する

3つ目の注意点は、採用市場における「型の特殊性」です。

多くの介護施設・医療機関は、今も1日8時間・週5日勤務を標準としています。1日10時間勤務という条件は、求職者にとって見慣れない働き方です。「10時間労働」という文字だけで敬遠されてしまったり、面接まで進んでも「週休3日で給与が変わらないのは魅力だが、実際に働くとなると1日10時間はきつそうだ」という印象を持たれたりすることがあります。

欠員が出て中途採用をかける際、その施設の主軸が1日10時間型だと、募集条件自体が特殊になり、他の標準的な求人と比較されて選ばれないケースが少なくありません。求人広告や人材紹介にお金をかける前に、まず働き方という土台が市場に受け入れられる形になっているかを確認する必要があります。穴の開いたザルにいくら水を入れても水は溜まりません。採用コストをかける前に、働き方という土台そのものを整えることが先決です。

1日10時間型で実際にうまくいっているケースの特徴

もちろん、1日10時間型が向いている施設もあります。私が見てきた成功例には共通点がありました。

夜勤体制との相性がよい

1夜勤1回勤務のスタイルで、休憩1時間を挟んだ10時間勤務(拘束11時間)がシフトの型として自然にはまる施設。夜勤明けの休息と週休3日の組み合わせが機能しているケースです。

地域の保育・福祉サービスの時間が比較的長い

都市部などで延長保育や学童のサービス時間が長めに確保できるエリアでは、送迎の負担が相対的に軽くなります。
求人市場ですでに10時間型が一定数流通しているエリア:近隣の同業種・他業種で似た働き方が一般化している地域では、求職者の抵抗感が小さくなります。

未婚の若い世代の就労者が多いエリア

結婚されていない若い世代の就労者が多いエリアも1日10時間の週休3日制は相性が良いと言えます。先に示したように若い世代は週休3日の働き方に強い興味があります。体力があり、子育て・介護といった家族のサポートを必要しない場合、給与が変わらない週休3日正社員の働き方は継続的に支持される可能性があります。

つまり、1日10時間型が機能するかどうかは、制度そのものの良し悪しではなく、施設の勤務体制と地域特性との「相性」で決まります。この見極めをせずに型だけを導入すると、既存職員の離職や採用難という形でしわ寄せが来ます。

結論:まずは1日8時間の選択的週休3日制から始める

ここまでの注意点をふまえ、私は多くの介護施設に、まず1日8時間・週4日勤務の選択的週休3日制からの導入をおすすめしています。特に地方においては強くお勧めしています。

理由は明快です。1日8時間という勤務時間は、既存職員の生活リズムを崩さず、保育園や福祉サービスの利用時間とも相性がよく、求人市場でも標準的な条件として受け入れられやすいからです。給与については、実働時間が減る分、一般正社員の80%程度に設定するのが妥当な水準です。これは同一労働同一賃金の観点からも根拠を説明しやすい水準であり、弊社が支援してきた事例でも採用の基準としてきました。

弊社の調査では、「週休3日正社員(給与8割)」を最も魅力的な働き方として選んだ人は28.7%にのぼりました。給与が下がってでも週休3日を選びたいという層が一定数存在するのです。1日10時間型で無理に給与維持を狙うより、まずは1日8時間型で「選べる制度」として定着させ、施設の実情に応じて型を広げていく方が、結果的に定着率も採用力も安定します。

型を先に決めるのではなく、既存職員の生活・地域の福祉サービス・採用市場の3つを起点に、施設に合った設計を考えることが、選択的週休3日制導入の第一歩です。

よくある質問

Q. 1日10時間型は絶対に導入すべきではないのでしょうか?

そうではありません。夜勤体制との相性がよく、地域の保育・福祉サービスの時間に余裕があり、求人市場でも受け入れられやすいエリアにある施設であれば、有効に機能するケースもあります。東京・大阪といった大都市圏での導入は十分考えられます。ただし特に地方にある介護施設では、まず一般正社員と1日8時間の週休3日正社員を選択できる選択的週休3日制から始めるほうがリスクが小さいというのが実感です。

Q. 1日10時間型と1日8時間型、どちらが職員に喜ばれますか?

これは職員一人ひとりの生活状況によります。子育てや介護等の家族のサポートを抱える職員には1日8時間型が合いやすく、時間外業務が常態化していて「まとめて働いて休みを増やしたい」という職員には1日10時間型が合う場合もあります。

Q. 1日8時間の週休3日でも給与を8割にすると、職員から不満は出ませんか?

説明の仕方次第です。同一労働同一賃金の考え方に基づき、実働時間に応じた給与設定であることを丁寧に説明すれば、多くの職員は納得します。実際、給与が下がってでも週休3日を選びたいという層は一定数存在します。

Q. うちの施設にどちらの型が合うか、自分たちだけで判断できるか不安です。

勤務体制、地域の福祉サービスの状況、採用市場の特性など、複数の要素を組み合わせて判断する必要があるため、外部の視点を入れることをおすすめします。

週休3日制の導入、まずは無料相談から

1日10時間型の週休3日制導入をお考えになられていた介護事業者様はぜひ弊社にご相談いただければと存じます。実際に自分の施設が1日10時間型の週休3日制導入が向いているのか、あるいは選択的週休3日制が向いているのか、客観的にアドバイスさせていただきます。短期ではなく中長期的に考え、専門家の力を利用しながら失敗しない週休3日制導入をお勧めします。

株式会社週休3日は、介護施設の「採用できない」「定着しない」「若い世代の応募がない」を解決する人事 採用支援会社です。

週休3日の社名で創業10年。「週休3日」と「介護事業」にどこよりも詳しい専門家が、選ばれる働き方開発(週休3日制導入支援)、次世代型採用サイト、SNS・ショート動画で採用と定着の課題を可決します。

週休3日制導入支援

講師依頼・メディア

介護施設の週休3日制導入について網羅的に知りたい方は、完全ガイド記事もあわせてご覧ください

この記事を書いた人

週休3日の専門家
永井 宏明 / Hiroaki Nagai
株式会社週休3日 代表取締役

印刷広告代理店営業、WEBコンサルを経て、静岡県の地域密着企業で週休3日総務課長で転職。人事・総務として10年勤務。同法人で介護施設の施設長に就任。8年間施設長を務め、多くの見取り(終末期)をコーディネート。同介護施設で週休3日制導入し6年間運用。その後、株式会社週休3日を創業し、2017年から事業開始。週休3日正社員という働き方の選択肢を広げる活動を続ける。2022年7月、クリニックからの事業承継により認知症グループホームの経営に参画。子供4人、共働き、育児パパ。趣味は演劇。作・演出 作品で静岡県芸術祭賞 他受賞。