東京や大阪などを中心に都市部において薬剤師が充足傾向な状況とは裏腹に、「薬剤師の採用がまだ難しい」「若い薬剤師を採用できる気がしない」と採用担当者がネガティブな声を発するのが地方です。静岡県や愛知県東部などの東海エリア、長野県山梨県などの甲信エリア、青森県山形県などの東北エリア、島根県鳥取県などの山陰地方を代表に地方において薬剤師は充足しているとは言えない状況です。調剤薬局も薬剤師の採用が簡単ではないようですが、特に病院における薬剤師の採用は深刻です。上述の該当するエリアでは「病院薬剤師不足が深刻」「病院薬剤師、○○人超不足」「薬局との競争激化で苦戦」といった見出しが新聞やニュースで見られます。どうして地方の調剤薬局や病院で薬剤師の採用が難しいのか。その理由について考えたいと思います。

本当に薬剤師の採用は難しいのか。

厚生労働省が令和4年3月に出した概況によると、薬剤師の総数は2020年時点で321,982人となっています。2010年に276,517人だった薬剤師の総数は、2014年に288,151人と4年で12,000人、1年あたりの平均で3,000人程度増加しました。続く2014年から2020年までの6年間で33,000人、1年あたりの平均で5,500人程度増加と、増加速度が増しました。2014年から2020年までの増加を2010年から2014年のそれと比較すれば183%です。この薬剤師の大幅な増加は、2006年度に薬剤師が4年制から6年制になった前後から始まった薬学部の新設ラッシュの影響が顕著に出ていると言えます。薬剤師は確実に増えているのです。さらに2020年春以降の新型コロナウィルスによるパンデミックの影響で、調剤薬局による薬剤師の人員整理が進みました。2020年夏秋以降、派遣薬剤師を中心に、かなりの数の薬剤師が関東から地方に職を探して移動するトレンドが生まれたように、薬剤師の需要は一定の調整が入ったと言えます。以降、少なくとも都市部においては採用担当者から「薬剤師不足」という言葉はほとんど聞かれなくなりました。現在、都市部における多くの採用担当者が重視しているのは「採用するなら無理のない給与で、若く優秀な薬剤師を選びたい」です。都市部においては、薬剤師採用が難しい時代は終わりを告げたと言って良いでしょう。

地方においても、上述のパンデミックの影響を受けての「薬剤師の移動」があり、2021年・2022年あたりには「最近は薬剤師さんの紹介がだいぶ増えた」「薬剤師が採用できた」といった声が聞かれるようになりました。都市部の比ではありませんが、地方においても薬剤師不足は少なからず改善したと言えます。

将来的にはどうでしょうか。厚生労働省調べでは、薬剤師国家試験合格者が今と大きく変わらなければ薬剤師数は将来的には43万人から45万人となると見ている一方で、必要な薬剤師数は33万人から40万人と見積もっています。全国的に見れば供給が需要を大きく上回ると思われます。薬剤師不足が深刻な時代は、全国的に見れば終焉を迎えたと言えるでしょう。

地方において薬剤師の採用が難しい3つの理由

それでも冒頭で述べたように、地方の少なくない数の調剤薬局や病院では薬剤師の不足や採用困難に悩まされています。その理由について、日頃から該当エリアで薬剤師の有料職業紹介事業を行なっている現場の視点として主だったものを3つ挙げたいと思います。

【1】若者は都市部に集まりやすい

日本は周知の通り少子超高齢社会であり若者が減少しています。加えて、若者の東京をはじめとした都市部への集中する傾向があります。独立行政法人統計センターが公表している都道府県別の転入者数から転出者数を差し引いた転入超過数の2022年の若者の数値(25歳〜34歳、日本人のみ)を見てみると、転入者の方が多かった都道府県の上位5つは東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、大阪府でした。特に東京の25歳〜34歳の転入超過数(日本人のみ)は10,000人を超えています。
一方で47都道府県のうち36都道府県は転入者より転出者が多く、25歳〜34歳の若者が東京などの都市部へ集中していく傾向が見られます。
これらの数字は、地方より都市部に魅力を感じ、地方から離れていく傾向がある若者の姿を示しています。今回切り取った25歳から34歳という年齢は薬剤師で考えれば薬科大学を卒業し免許を取得した1年目から10年目までの人材です。薬剤師に限定した数字はありませんが、これから期待できる若い薬剤師の少なくない人数が、他の同世代と同様に東京を中心とした都市部へ移動していると考えても間違ってはいないでしょう。
薬剤師の有料職業紹介の現場でも地方で勤務する若い薬剤師が「東京に行きたい」「関東に戻りたい」「都市部で仕事をしたい」等の希望を持ち、実際に行動されている方が多い印象です。一方で「地方で薬剤師として働きたい」という方の方が少ない印象です。特に2023年になり「2020年・2021年に仕事がなくなり働き口を求めて地方へ移住した薬剤師が、再び都市部に戻ろうとする」動きも見られます。以上を背景に、全国的には充足傾向でも偏りが発生し、地方において若い薬剤師が不足する状況が生まれていると思われます。

【2】若い薬剤師の価値観と合わない調剤薬局・病院が地方に多い

20代30代の薬剤師と話す機会が多い中で感じるのは、薬剤師として働くことの価値観や、希望する働き方をしっかり持っていることです。「患者さんとしっかりコミュニケーションを取りたい」「勉強する時間をしっかり確保したい」といったことから「副業がしたい」「投資の時間をしっかり確保したい」「時間外業務が長くない方が良い」「半日が週に2回はあり得ない」「週休2.5日正社員や週休3日正社員で働きたい」といったことまで幅広いですが、ひとつ共通していることは、地方の調剤薬局や病院がポジティブに受け取らないことを薬剤師が大事にされているという点です。調剤薬局や病院がどうやってポジティブに受け取らないかひとつひとつ見ていきます。「患者さんとしっかりコミュニケーションを取りたい」に対しては「そうは言っても一定のスピードが必要なんだよな。」となります。「勉強する時間をしっかり確保したい」に対しては「それはプライベートの時間を削ってでもやるもので、業務中はもちろん、週休3日などにして休みを増やしてやるものではない」となります。「副業がしたい」に対しては「副業なんてうちの法人では無理」や「副業する暇があれば仕事に集中しろ」となります。「投資の時間をしっかり確保したい」に対しては「うさん臭い」「まだ若いのに投資なんてあり得ない」となります。「時間外業務が長くない方が良い」に対しては「仕事をしていれば時間外業務だって発生して当たり前」となります。「半日が週に2回はあり得ない」は「それなりの給与をもらえるんだからそれくらい我慢しろよ」「そういうのが一般的だから仕方ない」となります。「週休2.5日正社員や週休3日正社員で働きたい」に対しては「そんな働き方はうちの法人にはない」「上司や人事や経営陣がOKを出しはしない」となります。

就業を開始してからこの価値観や働き方のミスマッチが顕在化し、早期に退職するケースも多いようです。そんな状況を目の当たりにした調剤薬局や病院からすると「今時の若い薬剤師は仕事が続かない」「若い薬剤師の採用は難しい」となってしまいます。悲しいミスマッチです。

都市部では他業種と同様に、地方よりも若い世代の働き方や価値観に近い「新しい価値観・働き方」を取り入れるスピードが速いように思います。その方が「経営的にもメリットがある」と合理的に判断するからではないでしょうか。合理性よりも従来の型・ルールを大切にしたり、協調性などのエモーショナルな部分をより大事にする傾向がある地方においては、都市部と比べると、20代30代の方が持つ働き方や働くことの価値観に対する不理解が生まれやすいと言えます。若い薬剤師を採用・継続雇用するにあたって生まれやすいミスマッチも、地方において薬剤師を採用しづらい状況を生む、さらにはその結果として薬剤師不足を生む理由のひとつです。

【3】20代30代の薬剤師に情報が届いていない。

インターネットが普及して四半世紀。スマホが生まれ15年が経ちました。当然ながら20代30代は主に情報収集はインターネットとスマホを使用します。就職・転職活動もインターネットとスマホを使います。面談や見学も重視しますが、就職・転職活動の最終段階においてです。就業・転職先として初期的な関心を持つこと。面談や見学に行く価値があるところか評価を行うこと。この2つについては、インターネット・スマホを使うことがほとんどです。もちろん端末としてパソコンを使う方もいますが、スマホと両方使用する方がほとんどでしょう。就職・転職において有料職業紹介を利用される薬剤師さんは多いですが、ほぼ確実に紹介された求人(法人)をインターネットでリサーチして、Webサイト(ホームページ)を通して評価します。
つまり、面談や見学に進む前に、Webサイト(ホームページ)を通して調剤薬局や病院の基礎的な情報を知ってもらうとともに、他の就業先と比べて何らかの優位性があることを感じてもらわなければならないのです。
都市部の調剤薬局・病院はこれらのことを常識的に理解し取り組んでいるところが多いです。しかし、地方においては都市部に比べればこれらの対応をしている調剤薬局・病院は極めて少ないです。上述の通り端末は多くの薬剤師がスマホを使いますが、パソコンから見た見た目を縮小したデザインをスマホに表示させるWebサイト(ホームページ)も散見されます。また、求人情報が抽象的だったり、コンテンツから働くイメージがつかないWebサイト(ホームページ)もよく見られます。


現在、この20代30代の情報収集はさらに次のステージへ進んでいます。Googleで検索するより前にインスタやX(旧ツイッター)などのSNSでリサーチする傾向が進化しています。ではWebサイト(ホームページ)が必要ではないのかというとそうではありません。有料職業紹介を使用しない場合も使用する場合も、最終段階(就業転職先の決定・応募)で使用されるので、充分な機能を有する必要性が高まっていると言えます。
いずれにせよ、Webサイト(ホームページ)をしっかり整備することが20代30代の薬剤師の採用には不可欠です。逆に言えば、Webサイト(ホームページ)やSNSを軽視していることで、20代30代に情報が届かなかったり、見学・面接をする価値がないと判断される(選ばれない)事態を生んでいると言えます。

まとめ〜地方の調剤薬局や病院が20代30代の若い薬剤師を採用する為に〜

以上が、地方において薬剤師の不足や採用困難に悩まされる調剤薬局や病院が多い理由です。これらの理由を全く分かっていない法人もあれば、担当者や経営者が分かっていても「そうは言っても色々なしがらみがあって改善できない」という法人もあります。しかし、本記事で述べたような背景を考えると、地方における薬剤師不足はすぐに解決するものではないと思います。地域医療に持続的に貢献する為にも、20代30代の薬剤師の採用は極めて重要です。気が付いたら周りの調剤薬局や病院が先行して対応した結果、薬剤師採用がいよいよ全くできなくなったというようなことが生まれないよう、今一度、真剣に若い薬剤師の採用を考えてはいかがでしょうか。

株式会社週休3日では、薬剤師の採用の為に①働き方の見直し(完全週休2日、週休2.5日、週休3日)や、②必要充分な機能を有する採用機能を強化した調剤薬局専用Webサイト(または、採用を最適化した病院のWebサイト)のお手伝い、③週休2.5日正社員や週休3日正社員など働き方重視で就職・転職先を探している薬剤師のご紹介、④採用ノイズ除去(有料職業紹介の上手な使い方)などでサポートさせていただいております。薬剤師の採用でお困りの調剤薬局・病院の経営陣・採用担当の方、ぜひお気軽にお問合せください。