週休3日制を導入する自治体が増えている中で、週休3日制を導入する中小企業が増えていないようです。若い世代を中心に週休3日制に対する興味関心は高まっている一方で、どうしてこのような状況が生まれているのでしょうか。自治体と中小企業それぞれに別の理由がありますが、深掘りするとそれぞれに抱える問題点が見えてきます。

まずは、週休3日制を導入する自治体が増えている状況について詳しく見ていきたいと思います。

増加する週休3日制導入自治体

2026年(令和7年度)から東京都で「週休3日」を選択できる制度を始めるニュースが昨年少し話題となりましたが、その他の自治体でも週休3日制導入が進んでいます。最近では、長崎県が2026年10月からの週休3日制導入を決定しました。

また神奈川県も2027年度中に週休3日制を導入する予定です。

朝日新聞によると都道府県は2025年2月の時点で16都道府県が週休3日制を導入している・または導入を検討しているとのことで、長崎県や神奈川県を含めると20近い都道府県が週休3日制導入に向けて動いていると考えられます。(朝日新聞の記事

愛知県日進市や静岡県沼津市といった市区町村でも週休3日制導入が始まっています。以下は沼津市の週休3日制についての説明です。

沼津市の週休3日制導入(https://www.city.numazu.shizuoka.jp/saiyou/hatarakikatakaikaku.htm より引用)

今後も自治体における週休3日制導入は進んでいくと考えられます。理由は一体何なのでしょうか。

自治体で週休3日制導入が増えている理由

どうして自治体で週休3日制導入が増えているのでしょうか。

週休3日制に魅力を感じる若い世代が多いから

自治体で週休3日制導入が増えている理由のひとつは「週休3日制に魅力を感じる若い世代が多いから」です。以下の図は少し前になりますが、弊社で実施した週休3日についてのアンケートです。

これは20代30代を対象としていますが、90%を超える若い世代が週休3日という選択肢がある企業に魅力を感じています。自治体は新卒採用に苦戦しているとされ、この状況を打開するために、若い世代に魅力がある働き方を導入し、採用に活かそうとしています。

もともと労働時間が短く、柔軟な働き方ができていたため週休3日制を導入しやすい

自治体で週休3日制導入が増えている理由のふたつ目は「もともと労働時間が短く、柔軟は働き方ができていたから」です。総仕上げとして週休3日制の導入を行なっていることが多いように感じます。

例えば、上述の神奈川県ですと、月毎の総労働時間は155時間だそうです。(朝日新聞記事より)一般的な週休2日制を採用している中小企業の月毎の総労働時間が平均して170時間程度であることを考えると、月に15時間程度、ほぼ2日分お休みが多いと言えます。自治体は大手企業に近い、あるいは大手企業並みに休日数が多いのです。

月毎の総労働時間1日の勤務時間休みの数(30日の月/平均)
自治体(神奈川県のケース)155時間程度7時間45分10日
中小企業170時間程度8時間8日または9日

自治体は、入職当初から有給休暇が多いのも特徴です。入職当初から20日(初年度は入社時期の関係で15日程度)の有給休暇が支給されるのが一般的なようです。民間企業、少なくとも中小企業は法令に準じ年間10日から毎年1日ずつ増加し10年かけて年間20日に到達します。自治体は、完全に週休3日と言わないまでも週休2日より明らかに休日数が多い状態であることが分かります。

また自治体の一部においてはフレックス制またはそれに近い働き方ができる状態であることが確認できます。例えば業務としてやむを得ず早出や残業により1日の勤務時間が長くなった場合には、同じ週の別日の勤務時間を短くするような制度です。時間外業務ではなく勤務時間を調整する労働変形の考え方で整えられた制度です。時間外業務手当よりも勤務時間を長くしたくない人もいる現在のトレンドに合わせた制度といえます。ただしこれまでですと、上手く勤務時間を調整したとしても週休3日にすることは認められていなかったと考えられます。(このケースは民間企業でも見られます)

いずれにせよ、元々柔軟な働き方ができていた中で、総仕上げとして選択的週休3日制を導入しているとも言えます。

内閣の人事院が「週休3日制導入」を勧告している

自治体で週休3日制導入が増えている理由の三つ目は「内閣の人事院が週休3日を勧告しているから」です。一番大きな理由と言えます。

内閣の所管に人事院があります。人事院のホームページにはそのミッションとして「国家公務員が働きがいを持って、いきいきと仕事ができる環境を作り出します。これを通じて、行政サービスの向上を実現し、国民の幸せを目指します。」と書かれています。(人事院のミッション・ビジョン・バリュー より引用)

人事院は大手企業の動向を参考に国家公務員の働き方や給与水準について、国会と内閣に勧告します。自治体はどうなっているでしょうか。都道府県や政令指定都市などの自治体には人事院と同様の役割を持つ人事委員会が置かれていますが、基本的には人事院勧告を強く参考にしているようです。また人事委員会のない小規模な市町村では、国や都道府県の改定状況や勧告を目安に決定している傾向が見られます。

自治体の働き方と給与水準は人事院の勧告の影響が大きいのです。この人事院において令和5年に「選択的週休3日制」を勧告しました。令和5年3月の勧告の中から週休3日について記載の部分を紹介します。

令和5年3月人事院による勧告01
令和5年3月人事院による勧告02

令和5年3月人事院による勧告 より)

人事院勧告において「より柔軟な働き方」を重視し、その中でも「選択的週休3日」を最上位に挙げています。

つまり自治体は人事院の勧告に基づき(参考にして)、週休3日制を導入しています。地方の市町村が週休3日制を導入するのはなかなか難しいかもしれませんが、目指すべき方向は明示されていますので、これからも徐々に週休3日制を導入する自治体は増えていくことが考えられます。

大手企業が導入する一方で、中小企業は導入が進まない週休3日制

週休3日制導入が進む大手企業

民間では大手企業による週休3日制導入が目立ちます。

代表的なものが、10年以上前から週休3日制を導入しているのユニクロを運営するファーストリテイリングです。地域正社員限定ですが週休3日制を導入しています。変形労働時間制を用いた1日10時間×週4日勤務で、週40時間の勤務時間・給与を維持する制度です。

最近では、JT(日本たばこ産業)は2027年4月から週休3日制導入を決定しました。

そのほかにもパナソニックホールディングス、佐川急便、ヤフー、SOMPOひまわり生命などの大手企業が週休3日制を導入しています。

週休3日制導入がむしろ後退傾向の中小企業

一方で、中小企業においては週休3日制の普及は停滞しているようです。東京などの都市部を中心に週休3日制を導入している企業はありますが、停滞しているようです。

厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、「何らかの週休3日制」を採用している企業割合は0.9%となっています。令和6年度が1.6%だったようで、減少しています。この数値を見れば停滞しているのは明らかであると言えるでしょう。

なお、「令和7年就労条件総合調査」の調べによると、主な週休制の形態別企業割合は以下の通りです。

完全週休2日制65.5%
(完全ではないが)何らかの週休2日制27.1%
週休1日制または週休1日半制5.6%
(完全ではないが)何らかの週休3日制0.9%(前年度は1.6%)
完全週休3日制0%(前年度は0.3%)

明らかに民間企業においては週休3日制は普及していないと言えます。それどころか後退しているのが実情です。

中小企業で週休3日制導入が進まない理由

自治体で週休3日制の導入が着実に広がる一方、中小企業ではなぜこれほどまでに導入が停滞しているのでしょうか。厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」が示す通り、「何らかの週休3日制」を導入している企業割合はわずか0.9%、しかも前年度の1.6%から減少しているという事実は、単なる「まだ広がっていない」という段階ではなく、むしろ「後退している」と捉えるべき数字です。この停滞の背景には、大きく3つの理由があると考えられます。

①印象が優先している

週休3日制と聞いて、多くの中小企業経営者が真っ先に思い浮かべるのは、

「休みが増える=その分働く時間が減る=売上(利益)が落ちる」

というものではないでしょうか。あるいは

「休みを増やすと、実質的に人件費が上がりそう」

という警戒感も根強くあるでしょう。

大手企業がニュースで取り上げる週休3日制の多くは、ユニクロ(ファーストリテイリング)の「1日10時間×週4日勤務で週40時間の勤務時間・給与を維持する」制度のように、変形労働時間制を駆使した精緻な制度設計に基づいています。しかし中小企業の経営者の多くは、こうした制度設計のノウハウや前例に触れる機会がほとんどなく、実際に自社にとってどんなメリット・デメリットがあるのかを検討する以前に、

週休3日 = 休みが増えるだけで経営にはメリットが少ない制度

という表面的な印象だけで判断してしまっているケースが多いはずです。

問題の本質は「週休3日制を検討した結果、導入しないと判断した」のではなく、「印象が先行している」状態で、「そもそも週休3日制に対して真剣に向き合っていない」という点にあります。制度の中身を精査する前に「メリットがなさそうだ」という漠然とした印象だけで思考が止まってしまい、自社の事業や業務内容、人員体制や採用状況に照らして検討する機会自体が失われているのです。

②既存社員が週休3日になるのが不安

経営者が週休3日制の導入に踏み切れない大きな理由のひとつが、「既存社員も週休3日にしたいんじゃないか」という不安です。特に日々の業務が特定の社員に紐づいている中小企業では、「あの人が休みを増やしたら、担当業務が回らなくなるのではないか」という具体的な懸念が真っ先に浮かびます。

さらに経営者が心配しているのは、

「一人が週休3日を選択したら、それを見た他の社員も次々と手を挙げるのではないか」

という連鎖への懸念です。誰か一人に特別な働き方を認めれば、社内の公平性が崩れ、なし崩し的に希望者が増えていくのではないか、そうなれば結局、常に人手が足りない状態が常態化してしまうのではないか、という警戒感です。

加えて、「休みが増えた社員の分を、他の社員がカバーすることになれば、カバーする側の不満が募り、離職につながるのではないか」という二次的な人材流出への不安もあるのかもしれません。人手不足を解消するために導入した制度が、かえって既存社員の負担を増やし、離職を招くという本末転倒な結果を、経営者は強く警戒しています。

こうした懸念の根底にあるのは、「週休3日制は全社員が一斉に休みを増やす制度だ」という前提です。しかし結論から言えばこれらの不安は間違いです。適切な計画に基づいて週休3日制を導入すれば心配している状況は発生しないことがほとんどです。

例えば、弊社が中小企業や介護施設等で週休3日制を導入支援をしている中で、「選択的週休3日制」を導入したケースでは、実際に変更を検討する社員は10%程度にとどまります。その中で「すぐにでも切り替えたい」という強い意向を持つ人はさらに一部に限られます。また、週休3日を希望する理由に優先順位をつけるなどして希望者多数の場合に混乱しない仕組み等を最初から導入することで、経営者が警戒している事態は回避できます。

株式会社週休3日が選択的週休3日制導入を支援した、医療法人里童における働き方の変更の理由と優先順位

より野心的な「1日10時間の週休3日制」ではなく、中小企業でも比較的導入しやすい選択的週休3日制を選択すれば、経営者が恐れているような「全社的な人手不足の加速」が現実に起きる可能性は、心配しているよりもはるかに低いのです。
この「実際にはごく一部の希望者だけが選択する制度である」という実態と、「全社員が一斉に休みを増やす制度だ」という経営者の思い込みとの間に大きなギャップがあることこそが、②で挙げた懸念の本質だと言えます。この誤解を解くことができれば、経営者が抱く人材不足への恐れは、実態に即した形で大きく軽減されるはずです。

③他社の様子を見ている

大手企業の週休3日制導入は、定期的にニュースで取り上げられています。しかしこれらはいずれも、豊富な人員と資金力、そして制度設計・労務管理の専門部署を持つ大企業の事例であり、「自社のような規模の中小企業が同じ制度を導入したらどうなるのか」を示す実例やノウハウは、世の中にほとんど出回っていません。

前例のない中で、自社が業界内や地域内で最初に動く「一番手」になるリスクを取れる経営者は多くありません。中小企業においては、なおさら及び腰にならざるを得ないのが実情です。結果として、多くの中小企業経営者は「どこかの同業他社が先に導入して、それがうまくいったら自社も検討しよう」という様子見の姿勢に留まり続けています。

この「様子見」の姿勢が業界全体、地域全体に蔓延してしまうと、誰も最初の一歩を踏み出さないまま、時間だけが経過してしまいます。これこそが、令和7年度の調査で「何らかの週休3日制」導入企業がわずか0.9%(前年度1.6%から減少)という数字に如実に表れている構造的な問題だと言えるでしょう。その結果として、日本は人口減少社会へと突入しつつあります。また、地方において深刻な人口減少が問題となっています。

冒頭に紹介した通り、若い世代の90%以上は「週休3日の選択肢がある企業」を魅力的に感じています。大手企業では積極的に週休3日制を導入し、中小企業が躊躇していては、当然後者の採用力はさらに低下します。人口増加社会ならいざ知らず、人口が減少している、若者が激減している社会が深まっているわけなので、本来は躊躇は許されないはずです。

「週休3日制導入が自治体で増え、中小企業で増えていない」事実が浮き彫りにする問題点

中小企業が抱える問題点

若い世代を採用できない状態に対し、具体的な策を打てない経営陣

日本の中小企業において、週休3日制導入を検討し、決断すべきなのは「人事部」ではなく「経営陣」です。大手企業であれば、人事部門が制度設計から労務管理、社内調整、社員への周知までを専門的に主導できる体制が整っています。自治体であれば人事院勧告という目指すべきお手本があります。しかし中小企業の多くには、そもそも専任の人事部という機関自体が存在せず、総務担当者が採用から労務管理まで兼任しているケースがほとんどです。

この構造的な違いにより、中小企業では「若い世代が採用できていない」という危機感を経営陣が持っていたとしても、それを制度改革という具体的なアクションに落とし込むための専門知識やリソースが決定的に不足しています。危機感はあっても、それを解決する手段を持たない経営陣が数多く存在しているのが実情です。

社会保険労務士に相談するケースもあると思います。しかし社会保険労務士はどちらかと言えば、関係法令の遵守や、労務管理や、各種保険の手続きなど、どちらかと言えば企業の人事における「守り」をしている立場となります。新卒・若い求職者のニーズを踏まえ「攻め」の意識で戦略的に人事を改革するのはどちらかと言えば得意でないところが多いのではないでしょうか。

中小企業において「人事責任者・担当者」が週休3日導入を提案するのは責任が重すぎる

また、仮に人事担当者や現場の管理職が「自社にも週休3日制を導入すべきではないか」と考えたとしても、それを経営陣に提案するのは極めて重い決断です。企業経営における重要な四要素「ヒト・モノ・カネ・情報」の最も重要な「ヒト」の働き方を決定すべきは、人事や採用担当者や現場の管理職ではなく経営陣の仕事です。

経営陣が決断を躊躇すれば、中小企業には「黒船」、つまり競合他社の導入、業界的な大きな潮流の変化、あるいは採用難がもはや看過できない限界点に達するといった、外部からの強烈なきっかけがない限り、自ら制度改革に動き出すことはないでしょう。

中小企業の経営者は依然として60代以上が多く、60代以上の価値観が優先されている

意思決定権を一手に握る経営者自身の年齢層も、無視できない要因の一つです。

社長年齢の表を見れば分かるように、60歳以上の経営者が半数を超えています、多くの経営者にとって「休むなんてけしからん」という価値観は、自身が若手社会人だった時代に形成されたものです。その価値観のまま経営判断を続けている経営者が一定数存在すると考えられ、これが若い世代の求める働き方との間に埋めがたいギャップを生んでいる可能性があります。世代間の価値観の違いは、単なる意識の差にとどまらず、実際の採用力の差となって企業の存続そのものに影響を与えているのです。

これはSNSやショート動画の活用においても影響が見られます。SNSやショート動画は若い世代の採用に必須ですが、経営者の価値観が追いつかず取り組めないケースは、人事部がない特に地方の中小企業でよく見られる状態です。結果、「若い人材を採用したい」と言っていても、若い人材から見つけてももらえない状況があります。

地方で自治体だけが、週休3日制導入が進むことの問題点

地方自治体だけ若い世代を採用できても地方は衰退する

仮に自治体だけが週休3日制の導入に成功し、若い世代からの応募が増えたとしても、それは地方全体で見れば手放しに喜べる話ではありません。地方の雇用の大半を支えているのは公務員ではなく、地域の中小企業です。自治体だけが「若者に選ばれる働き方」を提示し、そこに優秀な人材が集中してしまえば、相対的に中小企業の採用はさらに厳しくなり、地場産業の担い手がいっそう先細りするという歪んだ構造が生まれかねません。

つまり、自治体の週休3日制導入は、地方における人材獲得競争の中で「公務員だけが一人勝ちする」構図を生み出すリスクをはらんでいます。地方創生の観点から見れば、行政と民間が足並みを揃えて働き方改革を進めなければ、自治体の成功が皮肉にも地方経済の空洞化を加速させるという本末転倒な結果を招きかねません。

主体性に欠けるため、運用が滞る可能性がある

内閣の人事院が「選択的週休3日制」を勧告し、それを都道府県や政令指定都市の人事委員会が参考にし、人事委員会を持たない小規模市町村はさらに国や都道府県の動向を目安に制度を決定する。この構造から分かる通り、多くの自治体は「なぜ自分たちが週休3日制を導入するのか」を独自に整理し、腹落ちさせた上で制度設計しているわけではありません。上位機関からの勧告や他自治体の動向に追随する形で導入を決めています。

このような経緯で導入された制度は、いざ運用が始まった際に「そもそも何のための制度なのか」「自分たちの組織にとってどんな意味があるのか」が現場の職員に十分浸透しないまま形だけが先行してしまうリスクがあります。目的意識が共有されていない制度は、時間の経過とともに形骸化し、当初期待されていた効果(若手職員の獲得、働き方の柔軟化)を十分に発揮できなくなる可能性が否めません。

週休3日制導入や、導入した背景、実際の状況などの情報発信をほとんどの自治体がしておらず、思った程若い世代に刺さらない可能性がある

週休3日制を導入した、あるいは導入を検討している自治体の多くは、その制度自体は条例改正や公式発表という形で明らかにしていますが、「なぜ導入したのか」「実際にどのように運用されているのか」「導入前後で職員の働き方や満足度がどう変化したのか」といった、より踏み込んだ情報発信をほとんど行っていません。具体的にはWebサイトやSNSを使った情報発信はほとんどの自治体で全く手付かずです。

実際に週休3日制を導入している自治体を「自治体名×週休3日制」で検索しましたが、メディアのニュースでは掲載されていても、自治体のサイト等で週休3日制について発信している自治体は半数に満たない状況でした。

若い世代はもちろんあらゆる世代に対して、Webサイト、SNS、ショート動画を活用して情報発信するのは非常に重要です。

週休3日制を導入しても、魅力的な働き方を開発してもそれが求職者に知られなければ全く意味がありません。どういった狙い・背景で週休3日制を導入したのかといった情報発信も重要です。

制度そのものは魅力的であっても、その働き方そのものや、背景にあるストーリーや実際の運用実態が外部、特に転職・就職を検討している若い世代に十分に伝わらなければ、採用競争力の向上という本来の目的は達成されません。「制度を作ること」自体が目的化してしまい、その先にある「若い世代への訴求」「実際に選ばれる存在になる」というゴールまで到達できていない自治体が、今後さらに増えていく可能性があります。これは民間企業にとっても他人事ではなく、制度を作った後の情報発信・ブランディングまで含めて設計しなければ、同じ轍を踏むことになりかねません。

ではどうしたら良いか?

それでも特に地方の自治体と中小企業において週休3日制導入が不可欠

結論から言えば、それでも自治体と中小企業において週休3日制導入は不可欠です。現在は都市部の方が週休3日制導入をしている企業が多い傾向ですが、特に地方でこそ週休3日制導入は不可欠です。理由は若い世代がその働き方を求めているからです。人がいなくなれば、どんなに魅力的な地域(自治体)も、どんなに優秀な地方の企業も生き残ることができません。さらに若い世代はこれから加速度的に減っていきます。需要と供給の関係で、若い世代に選ばれる働き方を地方は追い求めて行かざるを得ません。

選ばれる働き方を開発する

図は働き方(就業形態)を考えるにあたっての構造を示したものです。

現在、多くの企業が収益への貢献(ビジネス)と適正労務を踏まえた働き方で採用を行なっています。しかし、特に地方の中小企業において就労ニーズと合致しておらず、採用や定着に苦戦しています。

中にはこのような企業も多いです。

俗に言うブラック企業はこれに当てはまります。労務に関する法令にも準じていません。「そうは言ってもうちは、バリバリ頑張る人材を採用したい」という気持ちを抑えながら、なんとかギリギリ適正労務はクリアしているケースも多いですが、話していると節々に考え方が滲み出てしまうなんてこともよく起きます。また、就労ニーズに寄せる動きには嫌悪感を表明することも多いです。しかし、需要と供給において若い世代が希少である中で、就労ニーズを抑えなければ若い世代の採用など不可能です。

目指すべきはこちらです。

収益への貢献(ビジネス)、適正労務とともに就労ニーズにも合わせて落としどこを見つけることです。冷静で絶妙なバランス感覚発揮しなければこれからの時代を乗り越えることはできないでしょう。

この「収益への貢献」と「適正労務」と「就労ニーズ」に合致しやすい働き方のひとつが週休3日制となります。週休3日制は単に働く人に寄り添うものではなく、収益への貢献(ビジネス)にも有意義な働き方になり得ると、経営者が理解することが重要です。

自治体だけでなく地域一体で週休3日制導入を推進する

述べたように特に地方において自治体だけ週休3日制を導入しても、地域の活力が失われるリスクがあります。若い世代が魅力を感じる働き方を開発し、活躍できる環境を地域で築き上げていくことが非常に重要です。

よく、「自然が溢れて、食事も美味しい、こんなにいい街。何より、素敵な人がたくさん」といった具合で若い世代の移住を推奨する地域プロモーションを見かけますが、働き方の価値観は昔ながらで伝えづらい地域が多いのではないでしょうか。仕事の内容も重要ですが、地方においては都市部より条件が良い給与条件を提示できないわけですし、せめて働き方は若い世代の価値観に寄り添うべきでしょう。自治体を含めて地域で週休3日などの働き方を選べるようにすれば、確実に「働きやすい地域」というブランディングができるはずです。

週休3日をと地域のリソースを組み合わせて、新しい生き方を提案する「働き方”も”変える移住」

また、週休3日を使えば地域のリソースと組み合わせて「新しい生き方提案」ができるのも特徴です。登山やクライミングが楽しめるエリアであれば「週休3日で働きながら登山やクライミングで楽しむ生き方をしませんか。」と言った提案が移住検討者に対してできるのです。

実際に弊社が運営している週休3日薬剤師.com(薬剤師の転職支援サービス)では、+1日のお休みを「登山」や「クライミング」に使いたい、という若い薬剤師さんを山梨県や長野県に移住してもらうことに成功しています。都市部から週休3日正社員で転職し、+1日のお休みを「登山」や「クライミング」などに使っていらっしゃいます。

マリンスポーツが楽しめるエリアであれば「+1日のお休みで、マリンスポーツを楽しみませんか」と言う生き方提案をすれば良いですし、起業支援に積極的なエリアであれば「+1日のお休みを使って、起業にチャレンジしませんか」と言う提案もあるはずです。働き方”も”変える移住には、都市部から地方への移住を促す可能性があるように思います。

若い世代に刺さるSNSとショート動画で「魅力的な働き方(週休3日)」を情報発信する

地域一体で週休3日制を導入するなど魅力的な働き方ができたら、若い世代に刺さる手段で伝えてなければなりません。つまりSNSとショート動画で「魅力的な働き方(週休3日)」を情報発信する必要があります。どんなに魅力的な働き方を開発しても、それを知ってもらわなければ意味がないからです。年上の世代に親和性が高い情報発信をしても意味がありません。若い世代が普段から利用するSNSとショート動画を活用し情報発信しなければなりません。

もちろんWebサイトも有効に使いたいところです。週休3日制導入をしている大手企業のひとつであるリクルートのWebサイトにおける読み物として週休3日制を情報発信しています。参考になりますのでご紹介をさせていただきます。

最後に

この10年程、週休3日制の普及を見てきましたが、これほどまでに企業で広がらないとは思っていませんでした。広がらない理由のひとつは、誤った方法・手順で週休3日制を導入し、上手くいかなかったケースが多数あることも見逃せません。SNSで「週休3日制はうまくいかない」という経営者の情報発信を目にすることもあります。

一方で、これほどまでに自治体で週休3日制が広がるとは思っていませんでした。それはある意味で喜ばしい変化だと思いますが、これまで述べてきたように大きな課題とリスクを包有しています。

週休3日総務課長を務めてから20年近く週休3日と共に生きてきた、週休3日の専門家として看過できないのは「目的」と「手段」についての認識が間違っている点です。

企業や自治体にとって週休3日制導入は目的ではありません。手段です。企業にとって週休3日制導入の目的は「採用」「定着」です。自治体の目的もほぼ同じですが「地域全体の活性化」の目的も念頭に置く必要があります。企業にとっての週休3日制は目的を達成するための手段です。

一方で、就労者・求職者にとっての週休3日も手段です。目的ではありません。仕事の他に大切にしたい・時間を使いたい「目的」があるから「手段」として週休3日を選択したいのです。

どうも自治体における週休3日制導入を見ていても、企業における普及の停滞(週休3日の失敗を含む)を見ていても、この「目的」と「手段」の認識に課題があるように思えてなりません。

人には、それぞれに前向きに働き活躍できる最適な働き方があるはずです。できる範囲で働き方の選択肢が広がるべきだと考えます。個々に違う働き方でも、それにより発生するであろう課題を克服できる程には、生成AIを含め便利なIT技術やサービスが揃っているはずです。

これまで経験したことがない人口減少社会が進むことは止められません。勇気を出して、これまでなかった新しい働き方を開発していくことが求められているのではないでしょうか。地方の中小企業にとっても、週休3日制導入は未来の話ではなく、今すぐに向き合うべき話です。

この記事を書いた人

永井宏明 / Nagai Hiroaki

株式会社週休3日 代表取締役

印刷広告代理店営業、WEBコンサルを経て、静岡県の地域密着企業で週休3日総務課長で転職。人事・総務として10年勤務。同法人で介護施設の施設長に就任。8年間施設長を務め、多くの見取り(終末期)をコーディネート。同介護施設で週休3日制導入し6年間運用。その後、株式会社週休3日を創業し、2017年から事業開始。週休3日正社員という働き方の選択肢を広げる活動を続ける。2022年7月、クリニックからの事業承継により認知症グループホームの経営に参画。子供4人、共働き、育児パパ。趣味は演劇。作・演出 作品で静岡県芸術祭賞 他受賞。